日本人の本来性

坂本 欣哉

明治の頃の日本人

日本には「土地、所の良さ」と言われるように、そこに人が住み始め、その土地とそこの自然が人間性や人柄を作り出す、「国が先」「国あってこそ」「国が有難い」という概念がある。その思いを最も強く意識した時代が明治の頃であろう。明治維新によって、江戸時代の鎖国をやめて開国し、外国を目の当たりに見たことで、日本人一人ひとりに「国」という感覚が生まれた時代だった。この頃が本来の日本の姿とも言われている。

この時期、日本に訪れた外国人は、皆日本人の貧しいが明るい振る舞い、素朴さ、正直さ、人の良さ、安全性等を褒めている。日本を批判したオールコックさえ、来日当初の印象を、「日本人は幸福で気さくな、不満のない国民であるように思われる」と言い、また、オズボーンは「誰もが…、幸せで煩いから解放されているように見えた」と言っている。

『菊と刀』は本来の日本人ではない

大東亜戦争のさなか、文化人類学者ルース・ベネディクト女史は著書「菊と刀」の中で日本に関し、恩、義、人情、恥の文化を持つ民族と半ば決め付けている。彼女のそれは対個人主体で、各階層における個人(天皇を最高階層としている)に対する恩、義、恥、と見ているようだ。しかし、日本人のそれは、天道(人の道)に対してであろうと思われる。

彼女は、アメリカにいる日本育ちの日本人から、また日本に関する文献や映画から、白人文化と異なった文化を持つ日本民族を想定している。肝心な現地調査は戦争中のため全く行っていない。

「かつて私が日本人と一緒に仕事をしたとき、日本人の使用する語句や観念の多くは、最初は不可解に思われたが、やがてそれらは重要な含蓄を持っており、何百年もの歳月を経た感情のこもったものであることがわかってきた。徳と不徳とは西欧人の考えているものとはまるで違ったものであった。その体系は全く独特のものであった。それは仏教的でもなく、また儒教的でもなかった。それは日本的であった。日本の長所も短所も含めて」と第一章(研究課題―日本)の最後に記している。

できれば、彼女が日本に来て、日本の風景を観て、日本を旅し、その地の旨いもんを食し、日本人と触れあって日本文化をもう一度調査して貰いたかった。そうすれば、「自分さておき人さんへ」の日本人の心を一行付け加 えてくれただろう。