台湾を救った陸軍中将

根本 博

田上 敏明

根本博の再評価

国民党の元党史委員会主任である陳鵬仁(チンポウジン)・中國文化大学史学研究所教授は、根本の行動と業績について冷静に分析する数少ない国民党関係者である。

「あの時の国民党は、川の水に押し流されるように敗走していました。1949年、共産党が揚子江を渡って南下できるかどうか、上海が最後の砦だったのです。国民党は上海防衛戦に敗れたことにより、まさに大勢が決まった。当時の状況は、共産党勝利という大勢が完全に決していました。しかし、根本さんはあの状況で、敢えて国民党を助けに来ている。それが驚きです。雪崩を打って国民党が敗走しているその時に、根本さんはやって来たのです。」


陳教授は、その根本の行動をこう評価する。

「台湾には“就大義”という言葉があります。これは、“大義につく”という意味です。根本さんの行動は、まさにこれだったと思います。根本さんの行動を考えるとき、武士道の精神を考えなければ、わからないと思うのです。根本さんは人間として大義につき、男として忠を貫いたのではないかと思います。ダイヤモンドというのは、それが知られていない時には何の価値もありませんが、ダイヤモンドとわかった時に、初めてその価値を評価されます。私は根本さんの行動は、ダイヤモンドだと考えています。今の若い人から見たら馬鹿げているかもしれません。でも、人間の生き方、いや死に方かもしれませんが、その行動はダイヤモンドではなかったでしょうか。私は、それはイデオロギーとか、蒋介石に対する評価などとも、関係のないものだと思っています。」

「根本さんは今日の台湾があるという意味では、確かに恩人です。でも、それよりも根本さんは、人間としての価値を求めて台湾に来たのではないでしょうか。それは、意義ある死に方だったのではないか。根本さんは、ただ私たちと一緒に死のうとしてくれたのだと思います。そういう日本人が現実に存在したこと、そのことを今の台湾の若い人に是非知って欲しいと思います。日本の若い人もそうですが、こういう日本人がいたことを、台湾人は忘れてはならないと思います。」

参考文献
『この命、義に捧ぐ』門田隆将、集英社
『ラスト・バタリオン』野嶋剛、講談社