ノンフィクション作家・河添恵子

米中はデカップリングへ
向かっている

欧州も〝変心〟
日本は新時代に向けた頭の切り替えを

領事館の追放合戦と米国大使の退任

米中対立の激化が止まらない。スパイの拘束や追放の他、メディアの追放合戦。七月には米国政府が、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館に対し閉鎖命令を出し、「政治的挑発だ」と反発した中共政府は、四川省成都にある米国領事館の閉鎖を命じた。

また、八月十日から在中国米国大使館の微博(Weibo)が新しいロゴを使用しているが、これまで入っていた文字「北京・中国」から「中国」が消え、「北京」だけになった。この頃から、「米国政府は『北京』『台北』と並列に位置付けた」「デカップリングの前兆」などの声が高まっていく。

翌月九月十四日には、在中国米大使館が「トランプ大統領とテリー・ブランスタッド大使の電話会談で『退任の決定』を確認した」との声明を発表した。

すると識者からは、「大使の突然の退任は、米中関係の底が抜けた証拠だ」「米国と中国のカップリング政策が、確実に死んだ兆候の一つ」といった声が次々と漏れてきた。

米国務省高官は匿名を条件に、国営ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に、「中国政府は多くの点で道をふさいだ」「対中外交は事実上すでに制限が多く、大使が現地にいるかいないかは基本的に問題ではなかった」「ニクソン政権以来、中国が採用してきた『求同存異(=双方の共通点を追求し、異なる点は棚上げする)』政策を打破する必要がある」と述べた。

別の高官は「米中がデカップリングへと向かっているかは、中国が両国間の制度的・イデオロギー的な相違に立ち向かえるかどうかが鍵であり、米国はもはや利益のために価値を犠牲にはしない」と語った。

中国が新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)や、知的財産の収奪、ウイグルや香港での人権侵害を引き起こしながら、軍事的覇権を強めていることへの米国の怒りは、「大使引き上げ」という次元に発展したのだ。

日本のマスメディアは、この大使の退任についても、事実を端的に報じるのみ。なぜ、米中関係の現実を我々国民に伝えようとしないのか? 米中西部アイオワ州の知事を長く務めるブランスタッド氏が、三年半前に大使として北京に赴く際には、「習近平国家主席の古い友人が大使に赴任」と、中国が歓迎していることを大々的に報じたのだ……。

支配者の財布が潤うことと軍拡のために「デカップリングを望まない」中共サマの意向に、マスメディアが寄り添っているとしか思えない。