元の国、日本

佐藤 成夫

義の国

次に「義の国」について触れていきたいと思います。

多くの人が知っている言葉があります。

義を見てせざるは勇無きなり

「人として当然行うべきことと知りながら、これを実行しないのは、勇気がない」という意味です。「人として当然行うべきこと」とはどういう事でしょうか。自分のことは後回しにして、他人のことや社会を優先させることでしょう。「滅私奉公」の気持ちです。草垣女史が終生大事にされた文字があります。それは「恕」です。その広く知られた意味は「己が望まないことを、他人に施してはならない」ですが、草垣女史は「人を思いやり、人のすべてを許す」ことだとおっしゃっています。そうした思い方が「みたま」に喜んでもらえる生き方なのです。

戦後民主主義が浸透した現代社会においては、「主権在民」を盾に国家に対して自分の権利ばかりを主張し、そうすることで他を害する場合も起きています。ところが、日本民族には先にふれたように身の内には「みたま」の存在を広く知らされることがありました。

それは先の東日本大震災でのことです。支援の食糧を待っていた中学生が、自分より後に並んでいたお年寄りを優先させた、これはほんの一例に過ぎず、被災地のいたるところでそのようなことがあったはずです。このように非常事態に遭遇すると、これまで目をつぶっていた「みたま」が働きだすのです。

国が元に還るには、日本国の構成員である私たち一人一人が、本当の自分はへその奥に鎮座する「みたま」であることを認識すると同時に、その思いに忠実に生きる努力、それに加えて草垣女史が長年にわたって示してくださった、お言葉その一つ一つを喜んで実行する、これだけでいいのです。
「言うは易し、行うは難し」 ですが、一人一人の努力によって本当のありがたい国を子々孫々まで残したいものです。