ノンフィクション作家・河添恵子

〝脱中国〟へ舵を切る
ブレグジット後の英国

「アフタ・コロナ」という前例のない未来
日本の覚悟が問われる

親中の「48グループクラブ」

「リポート:中国が試みる英国人エリートの取り込み」

こう題する八十六ページのリポートの存在が、七月上旬から一握りの国会議員やメディアの手にわたり注目されている。

執筆者は英国情報機関(MI6)の元情報機関員クリストファー・スティール氏と、情報コンサルタント会社「オービス」を共同で設立した、元外交官アーサー・スネル氏である。スティール氏は、ドナルド・トランプ米大統領の「ロシア・ゲート」事件のきっかけとなるリポートを執筆した、いわく付きの人物でもある。

リポートの全容は明らかになっていないが、一部を入手したデイリー・メールなどが七月七日に報じた内容には、このようなものがある。

「中国共産党は、政治家、学者、その他のエリートを『使えるバカ』もしくは『専属エージェント』にすることを目標にしている」

そして五人の英国人――貴族や政府職員らが名指しされた。

同リポートはまず、「原子力発電所や通信など、英国の国家インフラにおける中国のプレゼンスを確立し、英国の5Gネットワークを欧州市場への入口として使用。ファイブアイズ(米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド)を弱体化させ、中共政府の政策を世界が支持するように仕向けていくといった目的を、中共が掲げている」と警鐘を鳴らしている。

少なくとも六十人の保守党議員から成る強力な同盟が、「ファーウェイを英国に入国させるのを許すことはできない」と主張していた。しかも、「ファーウェイ・チームを監視する活動」も秘密裏に組織されていたそうだが、同リポートには、「中国共産党がこの動きを妨害するため、ハッカーに対して〝サイバーアタックの募集〟をして、六十万ポンドを提供した証拠もある」と記されている。

同リポートの肝心な部分は早々に把握していたと考えられるボリス・ジョンソン首相は、七月四日に「英国の5Gネットワークからの華為(ファーウェイ)排除を数ヵ月以内に開始する方針」を公にしていた。

また、「48グループクラブ」も〝親中集団〟として、保守系からやり玉に挙がっている。同クラブは、貿易業の英国人ジャック・ペリー氏らと北京で周恩来首相と会談した後の一九五〇年代に、仲間たち四十八人で発足、今日に至るまで英中の経済活動を盛り上げてきた。

ところが最近は、「現役国会議員、元国会議員、貴族、企業CEO、学界やメディア、著名人を含む英国の謎めいたトップエリートグループ」「英国企業が中国市場に参入するのを助ける、六百五十人の強力な組織」などと注目され、名指しをされた一人、トニー・ブレア元首相は、「組織との深い関係はない」と火消しに躍起になっている。

というのも、同クラブの現会長でジャック氏の息子スティーブン・ペリー氏は、習近平国家主席と三度面談するなど密接な関係にあるのみならず、「中共の政策をプロパガンダ(宣伝)し絶賛していた」と報じられたためだ。

今年一月末に脱・欧州連合(EU)、すなわちブレグジットの手続きを事実上、完了させた英国だが、当面の主目的は国内のエスタブリッシュメントに対する〝踏み絵〟と、自浄作用を兼ねた〝脱中国〟であることは明らかだ。