シリーズ「日本が危ない」②

日本の将来と私たちの責任

〜黛敏郎氏が語った30年前の「日本が危ない」〜

靖国公式参拝の問題

最後に、靖国公式参拝の問題ですね。「A級戦犯が合祀(ごうし)されているから、隣国の国民感情を考慮して参拝を中止する」と中曽根さんは言って、靖国公式参拝を中止された。その前の8月15日には、靖国懇談会が違憲ではないという判断を下したのを受けて、中曽根さんは公式参拝をされた。そして1年たつと、この体たらくであります。

A級戦犯合祀がどうとかこうとか、たった一つだけ申し上げたいのは、A級戦犯というのは日本が作った戦争犯罪人ではありません。占領下に行われた極東軍事裁判によって、A級とか、B・C級に区別されて戦争犯罪人という烙印をおされた人達であります。

そして、この人達は日本の裁判によって裁かれたのではない。外国の征服者によって裁かれた裁判であります。しかも、占領下でありますから、戦争はまだ継続中であって、講和条約が締結されていなかった。占領下に、敵軍の主催する軍事裁判によって裁かれ、絞首台の露と消えた人たち、それが戦争犠牲者でなくて、何でありましょうか。

もしそれが、本当に戦争犯罪人であるのだとするならば、占領が終わった時点において、日本国民の手によって、改めて裁判を行うべきであった、そしてその結果、戦争犯罪人、あるいは刑事犯罪人ということになったのならば、それは日本の国内問題であり、日本の国民が決めたことでありますから、私は尊重すべきだと思う。

しかし、今のA級戦犯はそういう手続きで決まった人たちでないのであります。従って、一国を代表する総理大臣が、その人たちを含む護国の英霊に対して参拝をされるということは当然至極のことだと考えます。にもかかわらず、中曽根さんはそれはなさらなかった。

最後に

日本の将来というものを考えたとき、それはやはり私達一人一人の日本国民の手にあるのだ。そして、その責任というものは、誰に帰することもできない。全部自分たちにある。そして、自分たちが本当に自信をもって、日本はこうあるべきだと考えたならば、自分たちの友人や後輩、子供や孫にそれを説き明かすべきだと私は思います。

このように思いますから、私は音楽家でありますけれども、こうやって皆さんの前にやって参りまして、いろいろと考えていることをお話もし、色々な国民運動を皆さんと一緒にやっていこうということで、日夜、心を砕いている次第であります。

あたらしい道の松木草垣女史から黛敏郎氏に、次のような言葉が掛けられた記録が残っております。

「今の貴方は、このごろの日本の国が何だか汚いと自分の中でわかされ、毎日つまらない…」
「このままで放っておくと…世の中の付き合いがたまらなくなり、(貴方は)衰えてしまう」
「有難い日本を10年位貴方はしっかりおんぶする役を賜る…」
「今の貴方まだまだしにくいところが二、三ある。それを建て替えて堂々と日本式に披露する素晴らしい人になると決心する…」
「貴方、これからの日本にどうしても必要な方です」
「どんどんいいことを言ってあげて人さんの誠の誠を一生懸命ゆすってあげる…本当に重大な役がある…」